
まず結論|登記事項証明書とは、登記の内容を証明する公的な書類
登記事項証明書とは、法務局が登記記録に記録された事項を証明する書面です。不動産の登記事項証明書なら、土地・建物がどこにあり、誰の名義で、抵当権などが登記されているかを確認できます。
「登記簿謄本」と呼ばれることもありますが、コンピュータ化された登記記録から発行するものを登記事項証明書といいます。売買・相続・融資・不動産調査で使われる一方、必要な情報は用途によって異なります。
30秒で分かる4つのポイント
- 何が分かる? 表題部(物件情報)、権利部の甲区(所有権)、乙区(抵当権など)を確認できます。
- どれを選ぶ? 履歴を含めて広く確認するなら全部事項、現に効力のある内容が中心なら現在事項を検討します。
- どう取得する? 法務局の窓口、オンライン交付請求、郵送請求などがあります。
- PDFとの違いは? 登記情報提供サービスのPDFは閲覧用で、登記官の認証文が付いた証明書そのものではありません。
登記事項証明書・登記簿謄本・登記情報PDFは何が違う?
「登記事項証明書」と「登記簿謄本」は実務上、同じ意味で使われることが多い言葉です。ただし「登記情報PDF」は法務局が交付する証明書とは異なります。
| 用語 | 何を指す? | 主な使い方 |
|---|---|---|
| 登記事項証明書 | 登記官の認証が付いた、登記事項を証明する書面 | 提出先が公的な証明書を求める場面 |
| 登記簿謄本 | 紙の登記簿の写しを指した従来の呼び方。現在も通称として広く使用 | 不動産取引での一般的な呼び方 |
| 登記情報PDF | 登記情報提供サービス等で内容を確認する電子データ。原則として証明書ではない | 社内調査・権利関係の事前確認 |
登記簿謄本の構成や基本的な見方は、2番「登記簿謄本とは?」で詳しく解説しています。
登記事項証明書で分かること|表題部・甲区・乙区
不動産の証明書は、まず「どんな物件か」「誰が所有しているか」「担保などの権利はあるか」の3つに分けて読むと理解しやすくなります。
① 表題部
対象物件を特定する情報。土地なら所在・地番・地目・地積、建物なら家屋番号・種類・構造・床面積など。
② 権利部(甲区)
所有権に関する情報。所有権移転、共有者・持分、差押えなど、登記された事項を確認。
③ 権利部(乙区)
所有権以外の権利。抵当権・根抵当権など、担保に関わる登記を確認。

たとえば土地を仕入れる場合、「場所と地番が一致しているか」を表題部で確かめたうえで、甲区で所有者、乙区で担保関係を調べます。所有者名だけ確認して、抵当権の存在を見落とさないことが大切です。
読み方を掘り下げたい方は、13番「全部事項証明書の見方」や4番「抵当権とは?」を参照してください。
登記事項証明書の主な種類|全部事項・現在事項・閉鎖事項を比較
証明書の種類を決めるときは、過去の経緯まで必要か、現在の状況を中心に見たいかを最初に判断します。不動産登記規則第196条には、全部事項証明書・現在事項証明書・何区何番事項証明書・所有者証明書などの区分が定められています。
| 種類 | 主に記載される内容 | 向いている調査 |
|---|---|---|
| 全部事項証明書 | 登記記録に記録されている事項の全部 | 所有権や担保の経緯を含めて幅広く確認したいとき |
| 現在事項証明書 | 現に効力を有する登記事項 | 現在の権利関係を中心に確認したいとき |
| 何区何番事項証明書 | 権利部の指定した区・番号に係る部分 | 特定の登記事項だけを証明したいとき |
| 所有者証明書 | 現在の所有権の登記名義人の氏名・住所・持分等、法令が定める事項 | 所有名義人を中心に確認したいとき |
| 閉鎖登記記録に係る証明書 | 閉鎖された登記記録の内容 | 分筆・合筆、滅失などに関連する過去の記録を調べたいとき |

迷ったら「提出先が指定した種類」を優先。指定がなく、権利関係を広く調べる必要がある場合は、全部事項証明書を起点に検討するのが分かりやすい方法です。提出先の要件や個別の事情によって適切な種類は異なります。
※証明サービスセンター、オンライン請求、窓口では、請求できる証明書の種類・取扱範囲が異なる場合があります。法務省「法務局証明サービスセンターの取扱証明書一覧」もご参照ください。
何を取得すべき?目的別の選び方
登記事項証明書で最も困りやすいのは「どの種類を取るべきか」です。目的から逆算して選ぶと、必要以上の取得や取り直しを減らせます。
| 利用場面 | 確認したいこと | 候補となる資料 |
|---|---|---|
| 不動産の売買・仕入れ | 対象物件、所有者、担保の有無、過去の権利変動 | 全部事項証明書を軸に調査。必要に応じて公図・地積測量図なども確認 |
| 相続不動産の確認 | 被相続人等の名義、取得原因、共有状況 | 全部事項証明書を起点に、戸籍等の別資料と突合 |
| 融資・担保確認 | 抵当権・根抵当権、債権額、順位など | 全部事項証明書等。共同担保目録などは必要に応じて確認 |
| 現在の状況だけ確認 | 現在の権利関係 | 現在事項証明書を検討。履歴が必要なら全部事項 |
| 法務局・行政への提出 | 提出先が指定する証明内容・発行時期 | 必ず提出先の指定を優先。PDFで代替できるかも確認 |
事例|「所有者が分かれば十分」と思っていたら
たとえば中古アパートの仕入れ前調査で、甲区だけを見て所有者を確認できたとしても、乙区に根抵当権が設定されていれば、取引に向けて追加の確認が必要になります。所有者を特定することと、売買できる条件を確かめることは別です。登記事項証明書で分かる範囲を把握し、必要に応じて当事者・専門家にも確認しましょう。
事例|土地の「住所」を見つけても、取得できないことがある
日常使っている住居表示と登記の地番が一致するとは限りません。建物なら家屋番号も重要です。地番を誤ると別の土地の証明書を請求しかねないため、地番検索サービスの比較(78番)や家屋番号の調べ方(24番)を参照してください。
※上記は一般的な判断例であり、特定案件の適法性・権利関係や、必要書類の提出要件を保証するものではありません。
登記事項証明書の取得方法は3つ|窓口・オンライン・郵送
登記事項証明書は、法務局の窓口、オンラインでの交付請求、郵送による請求などで取得できます。オンラインで申し込んだ場合も、原則として証明書は郵送または窓口で受け取ります。PDFファイルが直接交付されるわけではありません。
- 対象の土地・建物を特定する
土地は所在・地番、建物は所在・家屋番号などを確認。土地と建物は別の登記記録なので、両方必要なら請求対象を分けて確認します。
- 証明書の種類と請求方法を選ぶ
全部事項・現在事項など必要な種類を決め、窓口・オンライン・郵送から選択します。
- 請求し、手数料を納付する
オンラインの場合は「かんたん登記・供託申請」等で手続きを行い、電子納付します。窓口・郵送はそれぞれの請求案内を確認します。
- 交付された証明書を確認する
対象物件や通数に間違いがないか確認し、提出先が必要とする発行時期・内容を満たすかチェックします。

手数料はいくら?(2026年10月時点で確認できる公表額)
| 請求・受取方法 | 1通の手数料 | 注意点 |
|---|---|---|
| 書面による請求 | 600円 | 窓口での請求など。ページ数・通数による加算条件は要確認 |
| オンライン請求・郵送受取 | 520円 | 電子納付。証明書は郵送で受け取る |
| オンライン請求・窓口受取 | 490円 | 電子納付後、指定の窓口で受け取る |
手数料は法務省の公表額(2025年4月1日適用表)に基づきます。証明書の枚数・ページ数や取扱いによって加算・例外があり得ます。最新情報は法務省「登記手数料について」をご確認ください。
オンラインの操作、スマートフォン利用、登記情報PDFの料金などを詳しく知りたい場合は、15番「登記簿謄本はオンラインで取得できる?」で解説しています。
本人以外でも取得できる?
不動産の登記事項証明書は、一般に所有者本人以外も請求できます。もっとも、請求先・手段に応じて必要な情報や手続は異なります。不動産の登記事項証明書と、会社・法人の履歴事項証明書は種類や記載内容が異なるため、法人調査では混同しないようにしましょう。
取得前に押さえたい4つの注意点
取り直しや確認漏れを減らすチェックリスト
- ① 住所と地番は別:住居表示だけで特定せず、登記上の所在・地番・家屋番号を確かめる。
- ② 土地と建物は別:一戸建てでも土地と建物にそれぞれ登記記録があり、取得対象を分けて考える。
- ③ 証明書の種類:全部事項・現在事項など、提出先が求める書類と一致しているか確かめる。
- ④ 登記内容だけでは完結しない:現況、境界、占有状況、契約の有効性等は登記記録だけで判断できないことがある。
とくに不動産会社や金融機関では「1件だけ確認したい」のか「多数の物件について一覧で把握したい」のかで、業務の組み立て方が大きく異なります。個別の証明書取得と営業・担保調査のデータ活用は、目的に応じて分けて考えると効率的です。
住所や地番の確認から、登記調査へ
株式会社トーラスの「不動産チェッカー フリー」では、地図を起点とした基本的な不動産調査の操作を試せます。まず対象物件を探し、詳しい登記情報が必要な場合は取得方法や費用を確認しましょう。
※無料版の機能範囲と登記取得時の費用は異なります。正式な証明書が必要な場合は法務局の交付請求をご利用ください。
よくある質問|登記事項証明書とは?
Q. 登記事項証明書とは何ですか?
登記記録に記載された事項を法務局が証明する書面です。不動産では、土地・建物の物件情報、所有権や抵当権などの登記事項を確認できます。
Q. 登記事項証明書と登記簿謄本は同じですか?
日常の実務ではほぼ同じ意味で使われます。登記簿謄本は紙の登記簿の写しを指した名称で、現在は登記事項証明書という名称が使われます。
Q. 全部事項証明書と現在事項証明書の違いは?
全部事項は登記記録の事項を広く証明し、現在事項は現に効力を有する事項を証明します。権利変動の経緯を確認するなら全部事項を検討してください。
Q. 登記事項証明書は誰でも取得できますか?
不動産の登記事項証明書は、一般に所有者本人以外も請求できます。請求対象を特定するために、土地の所在・地番や建物の家屋番号などを確認しておきましょう。
Q. 登記事項証明書は無料ですか?
証明書の交付には手数料がかかります。書面請求・オンライン請求・受取方法で額が異なるため、法務省の最新案内を確認してください。
Q. PDFを印刷すれば登記事項証明書になりますか?
原則としてなりません。登記情報提供サービスのPDFには登記官の認証文等が付いていません。提出先によって照会番号が認められる場合はあります。
Q. 住所だけで請求できますか?
住居表示だけでは登記対象を一意に特定できないことがあります。土地の地番、建物の家屋番号などを確認してから請求する方が確実です。地番の調べ方はこちら。
Q. 土地と建物で証明書は1通ですか?
土地と建物は原則として別の登記記録です。両方の調査が必要な場合、それぞれの登記事項証明書を取得する必要があります。
Q. 証明書に有効期限はありますか?
登記事項証明書自体に一律の法律上の有効期限があるわけではありません。ただし提出先が「発行後3か月以内」などの条件を設ける場合があるため、事前に確認してください。
まとめ|登記事項証明書は「利用目的」で選ぶ
登記事項証明書は、登記記録の内容を公的に証明する資料です。不動産について何を確かめたいかを先に決めれば、全部事項・現在事項などの使い分けがしやすくなります。
過去の権利関係まで確認したいなら全部事項、現在の権利関係を中心に見たいなら現在事項を検討しましょう。提出用の証明書が必要な場合は、PDFとの違いと提出先の要件も重要です。
この記事の主な参考資料(公的情報)
- e-Gov法令検索|不動産登記規則 第196条・第197条(証明書の種類・認証)
- 法務省|不動産登記のABC(表題部・甲区・乙区)
- 法務局|登記事項証明書(土地・建物)を取得したい方(請求手順)
- 法務省|登記手数料について(料金)
- 法務省|登記・供託に関するオンライン申請等の活用について(登記情報PDFとの違い)
※制度・料金の説明は2026年10月22日時点で確認できる公表情報を基にしています。取得前に各機関の最新案内をご確認ください。
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