地主営業とは、土地を所有している個人・法人に対して、売却、 土地活用 、相続対策、融資などを提案する営業活動です。 成否を分けるのは提案内容そのものよりも、「誰に」「いつ」アプローチするかを決める情報の質にあります。
そして2026年10月1日、この情報収集の前提が大きく変わります。 不動産登記規則の改正により、これまで地主営業の主要な情報源だった登記受付帳から、 「登記の目的」と「不動産の所在事項」が原則として記載されなくなるためです。
今後は、変化が起きた物件を受付帳から探す方法だけに頼らず、 エリア内の土地・所有者・権利関係を継続的に蓄積する営業設計が必要になります。
この記事の読み方
| あなたの状況 | 読むべき箇所 |
|---|---|
| 地主営業をこれから始める | 第1章「地主営業とは」 → 第4章「地主の探し方」 |
| 地主の探し方を具体的に知りたい | 第4章「地主の探し方」 → 第5章「登記情報のシグナル」 |
| 2026年10月の改正の影響を知りたい | 第3章「受付帳改正で何が変わるか」 |
| 金融機関の営業担当 | 第6章「業種別に見るポイント」 |
| コンプライアンスが不安 | 第8章「法的な位置づけと注意点」 |
地主営業とは
地主営業とは、土地を所有している個人・法人に対して行う営業活動です。
主な提案内容
- 土地の売却
- 相続対策
- 土地活用
- アパート・賃貸住宅の建築
- 駐車場・コインパーキングの運営
- 資産の組み換え
- 融資・借換えの提案
- 資産管理法人の設立支援
地主営業を行っている主な業種
- 不動産会社(仲介・買取再販・デベロッパー)
- 金融機関(銀行・信用金庫・信用組合)
- ハウスメーカー・建設会社
- 税理士事務所・司法書士事務所
- 土地活用コンサルタント
- 損害保険会社・信託銀行
同じ地主へ複数業種が異なる切り口で接触しているため、単に訪問するだけでは差別化になりません。
なぜ地主営業が重視されるのか
意思決定権が本人にある
土地を売るか、アパートを建てるか、相続対策をするか、融資を受けるか。 これらの判断は原則として地主本人が行います。 個人地主では、意思決定者へ直接接触できれば案件が動く可能性があります。
一度の取引額が大きい
土地の売買、アパート建築、融資はいずれも1件あたりの金額が大きくなります。 接触数が少なくても、成約時の成果が大きい営業領域です。
継続的な関係になりやすい
地主は複数の不動産を保有していることがあり、一度信頼関係ができれば、 相続、建て替え、借換え、追加取得など次の相談へつながります。
先に信頼関係を築いた会社が長期的に相談窓口となりやすいため、各社が地主営業を重視しています。
2026年10月、地主営業の前提が変わる
登記受付帳の記載事項が簡素化される
2026年10月1日、不動産登記規則の改正が施行され、 法務局が開示する登記受付帳の記載事項が簡素化されます。
| 記載事項 | 改正前 | 2026年10月1日以降 |
|---|---|---|
| 受付年月日 | 記載あり | 記載あり |
| 受付番号 | 記載あり | 記載あり |
| 登記の目的 | 記載あり | 原則として記載されない |
| 不動産の所在事項 | 記載あり | 原則として記載されない |
なぜ地主営業への影響が大きいのか
登記受付帳は、登記申請の受付状況を記録した帳簿です。 従来は「いつ・どの不動産に・どのような登記申請があったか」を確認できたため、 相続登記直後の物件を探す方法などに使われてきました。
改正後は、受付件数と受付日は分かっても、 どこで、どのような登記が起きたかを受付帳から特定することが難しくなります。
| 確認・取得する情報 | 2026年10月以降 |
|---|---|
| 受付帳から相続登記を検知 | 困難になる |
| 受付帳から物件を特定 | 困難になる |
| 登記事項証明書 ・登記情報の取得 | 従来どおり可能 |
| 公図 ・ 地積測量図 の取得 | 従来どおり可能 |
| 所有者事項 の確認 | 従来どおり可能 |
フロー型からストック型へ転換する
- エリア内の土地と所有者をあらかじめデータベース化する
- 保有データ上で所有権移転などの異動を継続的に検知する
- 長期保有・遠隔地所有などの属性で優先順位をつける
- 司法書士・税理士など相続案件が集まる専門家との連携を強化する
受付帳という共通の情報源に頼れなくなるほど、自社で情報を蓄積・更新している会社との差が広がります。
地主の探し方:5つのステップ
STEP1:対象エリアを決める
まず営業範囲を絞ります。最初は市区全体ではなく、1つの町丁目を深く調べる方が効率的です。
| 判断軸 | 具体例 |
|---|---|
| 拠点からの距離 | 支店・営業所から車で30分圏内 |
| 開発動向 | 再開発、都市計画道路、用途地域変更 |
| 地価動向 | 公示地価・路線価が上昇している地域 |
| 建物の年齢 | 築30年以上のアパートが多い地域 |
| 土地利用 | 駐車場・資材置場・空き地が多い地域 |
| 既存取引との近接 | 既存顧客が所有する土地の周辺 |
STEP2:土地を条件で絞り込む
- 地積が一定以上の土地
- 空き地・駐車場・資材置場
- 築古建物がある土地
- 地目が田・畑などの農地
- 接道条件がよく活用余地がある土地
STEP3:地番を特定する
登記情報の取得には、住所ではなく 地番 が必要です。 住居表示と地番は別体系であり、機械的に変換できるとは限りません。
| 方法 | 費用 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 法務局への電話照会 | 無料 | 1〜2件だけ確認 |
| 公図の取得 | 360円/件 | 隣接関係も確認 |
| ブルーマップ | 無料〜 | エリアをまとめて調査 |
| 自治体の地番図 | 無料 | 公開自治体のエリア |
STEP4:所有者を調べる
地番を特定したら、登記情報を取得して所有者を確認します。
広く調べる段階では所有者事項を使い、有望な土地だけ全部事項で深掘りする方法があります。 ただし、抵当権や取得時期を優先順位の判断に使う場合は、最初から全部事項が必要です。
STEP5:リスト化して優先順位をつける
PDFのままでは横断比較が難しいため、Excel・CSVへ整理します。 詳細は 大量の登記簿PDFをExcel化する方法 で解説しています。
登記情報から読み取れるシグナル
登記情報は所有者名を確認するだけの資料ではありません。 権利関係や取得時期を読むことで、提案の切り口とタイミングを考えられます。
| 登記情報上の状態 | 読み取れる可能性 | 想定する提案 |
|---|---|---|
| 最近の相続による取得 | 遺産分割後、資産整理を検討する可能性 | 売却、納税資金、資産組み換え |
| 共有名義 | 意思統一が難しい可能性 | 共有物分割、持分買取、一括売却 |
| 所有者住所が遠方 | 管理負担を感じる不在地主の可能性 | 管理受託、売却、土地活用 |
| 長期保有 | 相続・資産承継の検討時期にある可能性 | 相続対策、生前贈与、資産組み換え |
| 抵当権なし | 担保余力がある可能性 | 融資、アパートローン、土地活用 |
| 抵当権が最近抹消 | 完済後、新しい資金需要が生まれる可能性 | 新規融資、活用提案 |
| 他行の抵当権 | 取引金融機関と借換え余地 | 借換え提案 |
| 根抵当権あり | 事業性融資の継続取引がある可能性 | 法人取引、メイン化 |
| 差押え・仮差押え | 返済が滞っている可能性 | 任意売却など。慎重な対応が必要 |
| 地目が農地 | 転用・相続相談が生じる可能性 | 転用支援、相続対策、土地活用 |
| 仮登記あり | 契約や他社提案が先行している可能性 | 状況確認 |
1つのシグナルだけで判断しない
「相続」×「共有名義」×「遠隔地所有」のように複数条件を組み合わせることで、 管理負担や売却ニーズの仮説を立てやすくなります。
業種別に見るポイントの違い
不動産会社
見るのは「売却の可能性」です。
- 相続による取得
- 共有名義
- 不在地主
- 築古アパート
金融機関
見るのは「資金需要と担保余力」です。
- 他行の抵当権と借換え余地
- 無担保の土地と新規融資余地
- 根抵当権と事業性融資の取引
- エリア内の金融機関別担保設定シェア
ハウスメーカー・建設会社
見るのは「建築余地」です。
- 地積と接道条件
- 建物がない土地
- 築古建物がある土地
- 用途地域、建ぺい率、容積率
税理士・司法書士などの士業
見るのは「相続の兆候」です。
- 共有名義
- 長期保有
- 相続登記が未了と思われる状態
地主営業で優先されやすい土地
- 駐車場・資材置場: 建物がなく、別の活用方法を提案しやすい
- 空き地・低利用地: 固定資産税負担に対して収益が少ない可能性がある
- 築古アパート: 建て替え・修繕・売却を判断する時期に入りやすい
- 農地: 相続や転用の相談が発生しやすい
- 相続が発生した土地: 資産整理の可能性があるが、接触には配慮が必要
- 共有名義の土地: 意思統一が難しく、持分や売却の相談余地がある
法的な位置づけと注意すべき点
登記情報の取得自体は適法
不動産登記は権利関係を公示する制度であり、対象不動産を特定できれば、 所有者本人でなくても登記事項証明書を取得できます。
取得後の利用には個人情報保護法が関係する
登記情報から得た氏名・住所は個人情報にあたります。 公開情報であることと、取得後に自由利用できることは同じではありません。
- 利用目的をできる限り特定し、公表または通知する
- 利用目的の範囲を超えて使わない
- 違法・不当な行為を助長する方法で利用しない
- 第三者提供では原則として本人同意を確認する
- 安全管理措置を講じる
相続案件は接触時期と表現に配慮する
法的に適法であっても、相続直後の遺族へ売却勧誘を送ることが 社会的に受け入れられるとは限りません。
実務上の推奨
- 個人情報保護方針へ登記情報の取得・利用目的を反映する
- 取得リストの保管・廃棄ルールを定める
- 相続案件の接触時期と表現について社内基準を設ける
- 判断に迷う場合は弁護士などへ確認する
地主営業でよくある失敗
- 情報が足りないまま訪問する: 訪問前に登記情報から仮説を立てないと、提案の切り口を作れません。
- 所有者を間違える: 相続登記未了では、登記簿に亡くなった所有者が残っている場合があります。
- タイミングを見誤る: 相続直後はニーズがあっても、感情的に接触が難しい時期です。
- 現地を確認しない: 解体や売却看板など、登記情報に表れない変化があります。
- 競合を把握しない: 抵当権者などから既存取引先を想定せず、同じ提案を繰り返すことがあります。
- 一度断られて終わる: 相続・建て替え・完済などで状況が変わるため、継続管理が重要です。
地主営業を効率化するには
従来の調査工程
地図を見る → 法務局へ行く → 公図を取得する → 地番を特定する → 登記簿を取得する → 所有者を確認する → 手作業でリスト化する、という流れです。
100件を調べる場合、地番特定・登記情報取得・ファイル整理・一覧化まで 数百工程が発生し、取得費用より担当者の作業時間が先に限界へ達します。
現在の選択肢
- 地図上で対象エリアの土地を確認する
- 地番が分からない状態から物件を特定する
- 所有者・担保設定を確認する
- 条件で絞り込んで営業候補を抽出する
受付帳改正後は、自社でエリア情報を持ち、継続的に更新できるかどうかが営業力の差になります。
登記情報を1件ずつ調べるだけでは分からないこと
- エリア内で条件に合う土地をどう見つけるか
- 同じ地主がほかにどのような土地を所有しているか
- エリア内でどの金融機関の担保設定が多いか
- 地番リストをどのように作るか
- 数百件のPDFを比較可能な状態へどう整理するか
登記簿謄本は、特定した土地について正確な情報を得る仕組みです。 提案すべき地主を見つける仕組みとは異なります。
地主を探す段階から支援するサービス
株式会社トーラスの 不動産チェッカー は、地図上で不動産の登記情報、所有者情報、担保設定などを確認できるサービスです。 地番が分からない状態から土地を特定し、地主営業や融資先開拓の候補を検討できます。
取得済みPDFを営業リストへ整理する場合は無料PDF変換サービス、 まとまった件数の登記情報を取得・データ化する場合は謄本取得スポットを利用できます。
よくある質問
Q. 地主営業は違法ではありませんか?
適切な方法で行う限り違法ではありません。 ただし、取得した氏名・住所は個人情報にあたるため、利用目的や安全管理を確認する必要があります。
Q. 地主はどのように探しますか?
エリアを決め、公図やブルーマップで地番を特定し、 所有者事項または全部事項を取得して所有者を確認するのが基本です。
Q. 2026年10月以降、地主営業はできなくなりますか?
できなくなるわけではありません。 受付帳から相続などを検知する手法が難しくなるため、ストック型への転換が必要です。
Q. 受付帳は完全に廃止されますか?
廃止ではなく記載事項の簡素化です。 受付年月日と受付番号は残りますが、登記の目的と所在事項は原則として記載されなくなります。
Q. 相続した土地へ営業してもよいですか?
法的に一律禁止されてはいませんが、接触時期と表現には特に配慮が必要です。
Q. 登記簿上の所有者がすでに亡くなっていました。
相続登記が未了の可能性があります。 取得日や登記原因が古い場合は、現在の意思決定者が別にいる可能性を想定します。
Q. 抵当権の設定額から残債は分かりますか?
正確には分かりません。登記されるのは設定時の債権額であり、その後の返済状況は反映されません。
Q. 地主営業は現在も有効ですか?
土地活用・相続・融資などの需要は続いています。 ただし、受付帳改正に合わせて情報収集方法を変える必要があります。
まとめ
- 地主営業は、土地所有者へ売却・活用・相続・融資などを提案する営業活動
- 成否を分けるのは「誰に」「いつ」接触するかを決める情報の質
- 2026年10月1日から登記受付帳の記載事項が簡素化される
- 受付帳依存のフロー型から、情報を蓄積するストック型への転換が必要
- 地主探しはエリア選定、土地抽出、地番特定、所有者確認、リスト化の5段階
- 地番の特定が調査工程の大きなボトルネック
- 所有者事項と全部事項は目的に応じて使い分ける
- 相続・共有・遠隔地所有・担保設定などのシグナルを組み合わせて判断する
- 取得自体は可能でも、取得後の利用には個人情報保護法上の注意が必要
- 相続案件では接触の時期と表現に配慮する
関連記事
参考・出典
- 不動産登記規則の改正(2026年10月1日施行)
- 登記情報提供サービス「利用料金の改定について」
- 法務局「登記事項証明書等の交付請求について」
- 個人情報の保護に関する法律
ご注意ください
本記事は2026年7月31日時点の公開情報をもとに作成しています。 制度や料金は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。 個人情報の取り扱いを含む個別の法的判断については、弁護士などの専門家へご相談ください。
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