用語集名寄せ・所有者調査
公開日:2026/10/26更新日:2026/10/26

不動産の名寄せとは?名寄帳・所有不動産記録証明制度との違い、調べ方と注意点を解説

不動産の名寄せとは、土地・建物の登記情報などを所有者を軸に照合し、関連する物件を整理する考え方です。名寄帳や2026年開始の所有不動産記録証明制度との違い、名寄せの手順と注意点、営業・調査への活用方法を解説します。

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30秒でわかる

不動産の名寄せは「物件ごとの登記情報を、所有者を軸に整理すること」です

  • 何をする? 複数の不動産情報を照合し、同じ所有者に関係する物件を整理します。
  • 何に使う? 相続調査、保有不動産の整理、地主営業、融資先調査などに役立ちます。
  • 何に注意? 同姓同名だから同一人物とは限らず、全所有物件を必ず把握できるわけでもありません。
  • 名寄帳と同じ? いいえ。名寄帳は自治体の固定資産税関係資料で、名寄せというデータ照合の行為とは異なります。

不動産の名寄せとは?まず意味を分かりやすく解説

不動産の名寄せ(なよせ)とは、土地や建物ごとに存在する情報を、所有者に関する情報で照合・整理し、同じ所有者に関連すると考えられる不動産を把握することです。一般的なデータ整理・分析の用語として用いられます。

例えば「土地Aの所有者を調べる」だけなら、土地Aの登記情報を確認すればよいでしょう。しかし、営業や資産調査では「その所有者が別の土地や建物も持っている可能性はあるか」という次の疑問が生じます。ここで必要になる考え方が名寄せです。

不動産の登記記録は、原則として個々の土地・建物ごとに作成されます。そのため、個別物件の所有者を確認することと、特定の人の所有不動産を一覧化することは別の作業です。

個別の土地や建物を調べる方法と、同じ所有者に関係する不動産を名寄せして整理する方法の違いを示した図
名寄せは物件から所有者への視点の切り替え。ただし、同姓同名だけでは同一人物と確定できません。

名寄せで「不動産が全部分かる」とは限らない

名寄せで分かる範囲は、使用するデータの収録範囲、検索条件、同一人物を見分ける方法、情報の更新時点によって変わります。「名寄せ=全国の全所有不動産を漏れなく確定できる機能」ではありません。

一般の登記情報提供サービスについても、運営元のFAQでは、所有者の氏名による不動産の検索(いわゆる名寄せ)はできないと案内されています。通常は対象の土地の地番、建物の家屋番号などから、個別に登記情報を調べます。

重要:所有者名だけで、誰でも全国の不動産を逆引きできるわけではありません。

一般の登記検索と、データベース上の照合・名寄せ、法務局の「所有不動産記録証明制度」は別の仕組みです。混同しないことが大切です。

不動産を名寄せすると何が分かる?具体例で考える

名寄せの価値は、個別の登記情報だけでは見えにくい保有状況を、所有者を軸に整理できる点にあります。

架空の例:あるエリアの土地Aを調査した場合

土地Aだけを見ると、所在地、地積、所有権、担保情報などを確認する調査で終わります。しかし別の土地Bや建物Cについても、正当な方法で取得した情報を照合し、同一所有者との関係を確認できれば、保有不動産の広がりを考える材料になります。

例えば、不動産会社なら土地活用提案の範囲を検討しやすくなり、金融機関なら顧客の不動産保有状況を理解するための調査を組み立てやすくなります。

ただし、保有している物件の数だけで売却意向や融資ニーズが分かるわけではありません。名寄せ結果は、対象者の事情を決めつけるためではなく、調査や提案の仮説をつくる材料として使います。

名寄せと所有者調査は何が違う?

比較項目所有者調査名寄せ
起点特定の土地・建物所有者に関する情報
主な問いこの物件は誰のものか?この所有者に関連する物件は他にもあるか?
必要な作業地番・家屋番号の特定、登記確認複数データの照合、同一性の検証
注意点登記上の情報と現況のずれ同姓同名、旧住所、収録範囲、更新時点

個別の土地所有者を調べる基本手順は、「土地の所有者を調べる方法」でも解説しています。

不動産の名寄せはどうやって行う?基本の5ステップ

実務では、手元にある登記情報や調査対象の物件情報を整理し、複数の項目を照合しながら候補を検証します。

名寄せの基本手順。物件を特定し、登記情報を取得し、所有者情報を照合して、同一性を検証したうえで整理・更新する5ステップ
重要なのは、氏名だけで結論を出さず、照合根拠や確認日を残すことです。
  1. 対象となる不動産を特定する。 住所しか分からない場合は地番を調べます。土地なら地番、建物なら家屋番号などで対象を特定します。
  2. 必要な登記情報を確認する。 所有者の氏名・名称、登記上の住所、持分など、目的に必要な項目を適切な範囲で取得します。
  3. 情報を照合して候補を作る。 漢字・表記のゆれ、住所変更、法人名称の変更などを考慮し、関連する可能性があるデータを整理します。
  4. 同一人物・同一法人かを検証する。 氏名だけの一致を根拠に断定せず、追加情報や原資料で確認します。根拠が弱い場合は「要確認」として扱います。
  5. 結果を一覧化し、必要に応じて更新する。 物件識別情報、確認日、取得元、判断の根拠、確認状況を残し、古いデータのまま使い続けないようにします。

数件なら手作業で照合できる場合もありますが、数百件・数千件を扱う業務では、登記情報の取得・データ化・照合・共有の仕組みを整える必要があります。

名寄せ・名寄帳・所有不動産記録証明制度は何が違う?

ここが最も混同しやすいポイントです。「名寄せ」は情報を照合・整理する行為、「名寄帳」は自治体の課税資料、「所有不動産記録証明制度」は法務局が提供する証明制度であり、同じ言葉のように扱うことはできません。

不動産データの名寄せ、自治体の名寄帳、法務局の所有不動産記録証明制度を、目的・対象範囲・制限事項で比較する図
3つは目的も取得方法も異なります。ご自身の調査目的と請求資格から使い分けましょう。
項目不動産データの名寄せ名寄帳(名寄せ台帳)所有不動産記録証明制度
主な目的複数のデータを所有者軸で整理する固定資産税関係の資産明細を確認する登記名義人が所有する不動産を検索条件ごとに一覧化・証明する
対象範囲利用できるデータの収録範囲次第原則として対象自治体・管轄区域の固定資産全国の登記記録が検索対象。ただし指定条件と一致するもの
主な利用者調査・分析の実施者。利用目的等の確認が必要本人・相続人・委任を受けた代理人等、自治体の要件による所有権の登記名義人本人、相続人その他一般承継人等
注意点同姓同名・住所変更・欠損データで誤判定や漏れが起き得る非課税資産の扱い、掲載範囲、交付条件が自治体により異なる氏名・住所等の検索条件が一致しない物件は抽出されない

名寄帳とは?自治体の固定資産税関係資料

名寄帳は、自治体が固定資産税の課税台帳等に基づいて、同じ納税義務者の土地・家屋をまとめた資料です。対象となる区域、記載項目、非課税資産の扱い、閲覧・写しの請求資格は自治体ごとに異なります。

例えば名古屋市では、同一区内の納税義務者ごとに情報をまとめ、非課税の土地・家屋は名寄帳に記載されないと案内されています。一方、西東京市では非課税資産や条件を満たす未登記家屋を含む旨が案内されています。「名寄帳なら全国の全不動産が分かる」とは考えないようにしましょう。

所有不動産記録証明制度とは?2026年2月2日開始の制度

2026年2月2日から、法務局で「所有不動産記録証明制度」が始まりました。所有権の登記名義人本人や相続人その他の一般承継人等が、指定した氏名・住所等の検索条件に基づいて、全国の登記記録から該当する不動産の一覧の証明を請求できる制度です。

ただし、検索条件と登記記録の氏名・住所等が一致しない不動産は抽出されないことがあります。また、第三者が他人の所有不動産を自由に調べるためのサービスではありません。請求資格や必要書類等は法務省の案内を確認してください。

使い分けの目安

相続人が故人名義の不動産を調べる場合は、所有不動産記録証明制度と関係自治体の名寄帳等を目的に応じて確認します。一方、企業が取得・保有している登記データを営業・調査業務で整理する場合は、データ照合としての「名寄せ」がテーマになります。どの方法でも、情報の網羅性を過信しないことが大切です。

名寄せの注意点・できないこと

1.同姓同名でも同じ所有者とは限らない

人名には同姓同名があり、住所も転居によって変わります。旧字体・異体字の違いなどもあるため、氏名の文字列が一致しただけで同一人物と断定しないことが重要です。

2.共有名義や法人名変更などで結果が複雑になる

共有不動産では複数の名義人が記録されます。法人の商号変更や合併、個人の氏名・住所変更がある場合も、単純な文字列比較だけでは適切に関連付けられないことがあります。

3.未登記物件やデータ収録外の物件は把握できない場合がある

データベースに収録されていない地域・時点・物件、登記されていない建物などは、名寄せに使用する情報だけでは把握できない場合があります。対象とする資料の種類と限界を理解する必要があります。

4.登記情報は売却意思や資産価値を示すものではない

不動産を複数保有していることは、売却意向、融資の必要性、相続予定、財務状況を直接証明しません。営業候補の優先順位を考える際も、現況や顧客の意向を別途確認します。

5.公開登記情報でも個人情報の取扱いは必要

個人情報保護委員会は、登記簿等により公開されている情報でも、個人情報を取得する場合には利用目的を特定する必要があると案内しています。営業目的で整理・保存する際は、利用目的、安全管理、保存期間、アクセス権限、外部提供の有無などを社内ルールに沿って確認してください。

不動産の名寄せを金融機関・不動産会社でどう活用する?

金融機関:保有不動産の調査を提案の材料にする

顧客の同意や適法な利用目的・権限の範囲で、担保不動産や周辺の保有状況を整理し、既存取引先の理解や新規融資候補の調査につなげる考え方があります。実際の信用判断には別途必要な審査・確認を行います。

不動産会社:地主営業・仕入れ候補の理解を深める

候補地を1筆だけ見るのではなく、関連が確認できた複数の物件を整理することで、土地活用・管理・売却査定など、提案の切り口を考えやすくなります。ただし、保有状況だけで売却意向を推定して断定することは避けます。

相続・士業:把握漏れを防ぐために資料を突き合わせる

相続財産の調査では、依頼者の立場や請求資格を確認した上で、登記情報、自治体の名寄帳、所有不動産記録証明制度など、複数の資料を補完的に使うことが考えられます。相続登記や法的判断は、必要に応じて司法書士・弁護士等と連携します。

TORUS | 不動産データ活用

大量の物件情報を「調べて終わり」にしないために

トーラスの「不動産チェッカー」は、地図を起点とした不動産調査や登記情報の活用、所有者に関連する不動産の保有状況の把握、営業候補の整理などを支援しています。

取り扱うデータの範囲や照合方法、更新時点、利用条件は目的や契約内容によって異なります。「どのエリアの、どの物件を、何のために調べたいか」からご相談ください。

不動産の名寄せに関するよくある質問

Q.不動産の名寄せとは何ですか?

A.土地や建物ごとの情報を、所有者に関する氏名・住所等で照合し、同じ所有者に関連すると考えられる不動産を整理することです。同一人物かどうかの確認が欠かせません。

Q.所有者の名前だけで全国の不動産を検索できますか?

A.一般の登記情報提供サービスでは、所有者名による不動産の逆引き検索はできません。制度上の請求資格がある場合は、所有不動産記録証明制度など別の方法を確認してください。

Q.名寄せと名寄帳の違いは何ですか?

A.名寄せは情報の照合・整理という行為、名寄帳は自治体の固定資産税関係資料です。名寄帳は対象区域や掲載内容、交付要件が自治体によって異なります。

Q.所有不動産記録証明制度を使えば、誰でも他人の資産を調べられますか?

A.いいえ。原則として登記名義人本人、相続人その他一般承継人等に請求資格が限られています。また、指定した氏名・住所等の検索条件に合わない登記は抽出されません。

Q.不動産の名寄せは無料でできますか?

A.既に適法に保有しているデータを表計算ソフトなどで整理することはできますが、登記情報の取得や証明書の交付、自治体資料の請求には費用がかかる場合があります。全国の所有不動産を誰でも無料で完全検索できる制度ではありません。

Q.同姓同名の人を誤って名寄せしてしまうことはありますか?

A.あります。氏名が同じでも別人の可能性があるため、住所・変更履歴など複数の情報を照合し、根拠が不十分なら「要確認」とすることが重要です。

Q.不動産営業で名寄せ結果を使うときの注意点は?

A.データの正確性と確認時点、利用目的、個人情報の適切な管理を確認してください。名寄せ結果だけで売却意思や融資ニーズを決めつけないことも重要です。

まとめ|「物件を調べる」から「所有者を理解する」へ

不動産の名寄せは、個別の登記情報を所有者の視点で整理し、複数物件の関連性を検討するための方法です。単なる登記取得とは役割が異なり、金融機関の調査や不動産会社の営業候補整理などに活用できます。

一方で、同姓同名、住所変更、収録対象外の不動産などによって、誤判定や把握漏れが生じる可能性があります。また、名寄帳や所有不動産記録証明制度は目的・請求資格が異なるため、混同せずに使い分けることが大切です。

大切なのは「名前が一致したから同一人物」と決めつけず、情報を正確に照合し、適切な目的で活用すること。まずは、対象エリアと調査したい不動産、取得できるデータを整理するところから始めましょう。

参考情報・出典

制度の説明は2026年10月26日時点で確認できた公表情報に基づきます。自治体ごとの取扱い、手数料、請求資格などは変更される場合があるため、利用前に公式情報をご確認ください。

SERVICE | 株式会社トーラス

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