不動産会社の相続営業は「候補を見つける → 優先順位を付ける → 適切なタイミングで接点を作る」が基本です

不動産会社の相続営業とは?
不動産会社の相続営業とは、相続によって所有者や管理状況が変わった不動産について、売却・管理・賃貸・活用・建替えなどの相談機会を見つける営業活動です。
相続が発生すると、それまで親世代が保有していた土地や建物を、子どもや親族が引き継ぐことがあります。相続人がその不動産に住まない、遠方に住んでいる、共有名義になった、建物が古い、管理負担が重いといった事情があると、不動産の今後を検討する必要が生まれます。
そこで不動産会社には、売却査定だけでなく、空き家管理、賃貸、土地活用、建替え、買取、資産整理など、複数の相談機会があります。
ただし、相続が起きた=売却ニーズがある、ではありません。相続人が住み続けることもあれば、賃貸や保有を選ぶこともあります。相続営業では「売ってください」と迫るのではなく、相続人が不動産の選択肢を整理できるように接点を作ることが重要です。
相続営業を一言でいうと
「相続した不動産をどうするか決まっていない人に、売却だけでなく保有・管理・活用まで含めて選択肢を整理する営業」です。
なぜ不動産会社が相続案件を狙うのか
相続は、不動産が長期間動かなかった状態から、所有・管理・利用方針を見直すきっかけになりやすいイベントです。
所有者が変わることで不動産の方針が変わる
親にとって必要だった実家や土地でも、相続人にとって必要とは限りません。すでに別の住宅を所有している、地元へ戻る予定がない、土地活用に関心がないなど、世代交代によって不動産に対する考え方が変わります。
管理負担が表面化しやすい
空き家の清掃、庭木や雑草の管理、固定資産税、築古建物の修繕、賃貸物件の入居者対応などは、相続後にはじめて負担として認識されることがあります。
売却以外の相談にもつながる
相続案件は、売買仲介だけが対象ではありません。賃貸管理、空き家管理、買取、建替え、土地活用、リフォームなど、自社の事業に応じた提案につながる可能性があります。
相続後に相談が起きやすい不動産の特徴は、「相続後に売却相談が起きやすい不動産とは?」で詳しく整理しています。
相続案件を見つける5つの方法
相続営業では、一つの情報源だけに頼るより、複数の入口から候補を持つ方が安定します。
| 見つけ方 | 特徴 | 向いている営業 |
|---|---|---|
| 士業・専門家からの紹介 | 相続相談の発生後に接点を持ちやすい | 売却・査定・資産整理 |
| 既存顧客・過去顧客 | 信頼関係があり相談を受けやすい | 売却・管理・住み替え |
| 空き家・築古物件から探す | 管理負担が生じやすい不動産を起点にできる | 空き家・建替え・買取 |
| 登記情報を確認する | 所有者や権利関係を確認できる | 所有者調査・営業候補整理 |
| 地図・不動産データから探す | 営業したい条件を先に決めて候補を持てる | 継続的な新規開拓 |
1. 司法書士・税理士などから紹介を受ける
司法書士や税理士などは、相続手続きや税務相談を通じて相続人と接点を持つことがあります。専門家との関係を作り、不動産の売却や活用相談が必要になった際に紹介を受ける方法は、相続営業の代表的なルートです。
一方で、紹介だけに依存すると案件数を自社でコントロールしにくいという課題があります。そのため、紹介営業と自社で候補を探す営業を組み合わせる方が安定しやすくなります。
2. 既存顧客・過去顧客から相談を受ける
過去に売買や賃貸で接点があった顧客から、親の実家や相続した土地について相談されるケースがあります。定期的な情報提供や相談窓口の案内を続けることで、相続が発生した際に思い出してもらいやすくなります。
3. 空き家・築古物件・低利用地から候補を探す
空き家、築古アパート、利用されていない土地、駐車場などは、相続を含むさまざまな事情で管理や活用の課題を抱えている可能性があります。
戸建て空き家の所有者調査は、「空き家の所有者を調べる方法」、築古アパートの候補探しは「築古アパートの所有者を探す方法」も参考になります。
4. 登記情報から所有者・権利関係を確認する
候補となる不動産が見つかったら、登記情報を確認し、所有者や共有関係、抵当権などを把握します。
登記情報は営業対象を整理する重要な材料ですが、登記上の情報だけで売却意思を判断することはできません。あくまで候補確認の一部として利用します。
5. 地図と条件から相続営業候補を先に持つ
受付帳や新着情報を待つのではなく、「自社が営業したい不動産」を地図や条件から先に候補化し、所有者・登記情報を確認しながら継続管理する方法です。
この方法では、空き家、築古建物、広い土地、低利用地など、自社の営業テーマに合わせて候補リストを作れます。相続が発生した不動産だけを追うのではなく、相続・売却・管理負担などの相談につながる可能性がある不動産を継続的に確認するという考え方です。
相続営業リストの作り方と優先順位
候補を見つけても、すべてに同じ営業をするのは効率的ではありません。相続営業では、候補をリスト化し、確認する順番を決めることが重要です。
まず候補不動産をリストとして持つ
住所、地番、物件種別、不動産の状態、所有者確認状況、登記確認日、営業状況などを一覧にしておくと、継続的な確認がしやすくなります。
具体的な項目と作り方は、「相続営業リストの作り方」で詳しく解説しています。
相続の有無だけで優先順位を決めない
営業優先度は、相続があったかどうかだけではなく、不動産の状態、管理負担、共有状況、遠方所有、建物の古さなどを組み合わせて判断します。
| 候補 | 相談が生まれやすい理由 | 営業の入口 |
|---|---|---|
| 空き家 | 管理・防犯・税負担が続く | 売却、管理、賃貸 |
| 遠方所有 | 現地管理が難しい | 売却、管理委託 |
| 共有名義 | 意思決定や費用負担が複雑になりやすい | 査定、資産整理 |
| 築古アパート | 修繕・空室・管理負担が重なりやすい | 売却、建替え、管理 |
| 低利用地 | 利用目的がなく管理費用だけがかかる | 売却、土地活用 |
候補の具体的な優先順位の付け方は、「相続営業の優先順位の付け方」で整理しています。
相続不動産へのアプローチ方法
候補リストを作った後は、相手との関係や不動産の状況に合わせて接点を作ります。
DM・手紙
いきなり電話や訪問をするより、まず会社や相談内容を知ってもらいたい場合に向いています。
「不動産を売りませんか」という一方的な訴求より、空き家管理、売却査定、活用、相続不動産の整理など、相談できる内容を示す方が自然です。
電話
電話では、相続したかどうかを決めつけず、「不動産の管理や活用について困っていることがないか」という相談起点で話す方が適しています。
相手の状況が分からない段階で強く売却を迫ると、警戒される可能性があります。
訪問
地域密着型の営業では訪問も選択肢になります。ただし、相続は家族の事情に関わるため、訪問時間、話し方、営業目的の説明など、通常の物上げ営業以上に配慮が必要です。
司法書士・税理士などとの連携
相続登記、遺産分割、税務判断などは不動産会社だけで完結できないケースがあります。専門家と連携し、不動産会社は査定・売却・活用・管理など自社の専門領域を担当する体制を作ると、顧客にとっても相談しやすくなります。
一度断られても候補からすぐ消さない
相続直後は家族の方針が決まっていなくても、数か月後・数年後に売却や管理の相談が生まれることがあります。
そのため、接触結果や確認日を残し、必要に応じて再確認できる運用が重要です。相続営業は「今すぐ売る人だけを探す」のではなく、候補を継続的に管理する営業と考える方が実務に合います。
相続営業でやってはいけないこと
「相続したなら売るはず」と決めつける
相続人には、住む、貸す、保有する、親族で利用するなど複数の選択肢があります。最初から売却前提で接触すると、顧客の状況とずれる可能性があります。
相続直後に強引な営業をする
相続は家族を亡くした直後に発生することがあります。営業効率だけを優先せず、相手の状況や感情に配慮する必要があります。
登記情報だけでニーズを断定する
所有権移転や共有状態などは営業仮説の材料になりますが、それだけで売却・借換え・活用ニーズがあるとは判断できません。
登記簿の個人情報を目的なく集める
登記簿等で公開されている情報でも、個人情報であることに変わりはありません。個人情報保護委員会は、登記簿等から個人情報を取得する場合にも利用目的の特定が必要と案内しています。
営業リストを作る際は、利用目的、管理方法、社内ルール、営業方法を整理し、個人情報保護法や各種法令・業界ルールを踏まえて運用することが重要です。
相続営業は「情報があるから営業する」ではなく「相談可能性を仮説として持つ」
登記・地図・物件情報は、相手の事情を決めつけるためではなく、どの不動産にどのような課題があり得るかを考える材料として扱います。
相続登記の義務化と相続営業の関係
2024年4月1日から相続登記の申請が義務化されました。法務省によると、相続によって不動産の所有権を取得した相続人は、原則として、相続の開始と不動産の所有権取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。
ただし、相続登記がされたからといって、その不動産を売却するとは限りません。相続登記は所有関係を確認する重要な情報ですが、不動産会社の営業では、物件状態や管理負担、相続人の利用予定などと組み合わせて考える必要があります。
受付帳様式変更後の相続営業は「候補を先に持つ」
2026年10月1日から、不動産登記受付帳の様式変更が各法務局で案内されています。これまで受付帳の情報を起点に相続・売買などの営業候補を探していた会社では、従来と同じやり方だけに依存しない営業設計が必要になります。
今後は、営業したい不動産を条件から先に候補化し、所有者・登記情報を確認しながら継続管理する方法が重要です。
これからの基本フロー
- 営業エリアを決める:自社が営業できる地域を設定します。
- 不動産条件を決める:空き家、築古、広い土地、低利用地など、相談につながりやすい条件を整理します。
- 候補不動産を作る:地図・不動産データから候補を抽出します。
- 所有者・登記情報を確認する:必要な候補について所有者や権利関係を確認します。
- 優先順位を付ける:管理負担や不動産状態などを加味して確認順を決めます。
- 営業・継続確認する:接触結果を記録し、必要に応じて再確認します。
不動産チェッカーを使った相続営業の流れ
不動産チェッカーでは、地図上から土地・建物を確認し、営業条件に合わせて候補を探し、必要な不動産について所有者・登記情報を確認する流れを作れます。
相続営業での活用イメージ
地図 → 条件設定 → 候補抽出 → 所有者・登記確認 → Excel等でリスト化 → 優先順位付け → 営業・継続確認
「相続があった不動産を一件ずつ探す」のではなく、自社の営業テーマに合う候補を先に持ち、必要なタイミングで確認できる状態を作ることがポイントです。
自社の営業エリアと商品に合わせて、相続営業の候補条件を整理しませんか?
候補不動産の探し方、所有者確認、営業リスト、優先順位まで実務に合わせてご案内します。
よくある質問
不動産会社の相続営業とは何ですか?
相続によって所有・管理状況が変わった不動産について、売却、管理、賃貸、活用、建替えなどの相談機会を見つける営業です。相続=売却と決めつけず、相続人の選択肢を整理する姿勢が重要です。
相続不動産の営業先はどうやって探しますか?
司法書士・税理士などからの紹介、既存顧客、空き家・築古物件、登記情報、地図・不動産データなどから候補を探します。複数の入口を組み合わせる方が安定しやすくなります。
相続営業リストには何を入れればよいですか?
住所・地番・物件種別・不動産の状態・所有者確認状況・登記確認日・営業状況・次回確認日などを整理すると、継続管理しやすくなります。
相続登記があった不動産は営業優先度が高いですか?
相続登記だけで売却ニーズを判断することはできません。空き家、遠方所有、共有、築古、管理負担など、不動産の状態と組み合わせて優先順位を考える必要があります。
相続人への営業で注意することはありますか?
相続直後の感情への配慮、売却前提で話さないこと、個人情報の利用目的を明確にすること、法務・税務の専門判断を自社だけで行わないことなどが重要です。
受付帳の様式変更後は相続営業をどう変えればよいですか?
受付帳の新着情報だけに依存せず、自社が営業したい不動産を条件から候補化し、所有者・登記情報を確認しながら継続管理する方法へ切り替えることが重要です。
まとめ
不動産会社の相続営業では、相続が起きた不動産を探すこと自体が目的ではありません。相続によって管理負担や利用方針が変わり、売却・管理・活用などの相談が生まれる可能性がある不動産を見つけることが重要です。
案件の入口は、士業からの紹介、既存顧客、空き家・築古物件、登記情報、地図・不動産データなど複数あります。候補をリスト化し、不動産の状態や所有関係から優先順位を付け、DM・電話・訪問・専門家連携などを使い分けます。
2026年10月の受付帳様式変更後は、新着情報を待つ営業だけでなく、候補不動産を先に持ち、継続的に確認する営業へ切り替えることが重要です。
相続営業を一度きりのテレアポではなく、候補発見・所有者確認・優先順位・接触・再確認まで含む仕組みにすると、継続的な営業活動として運用しやすくなります。
関連記事
営業・個人情報利用上の注意
本記事は一般的な情報提供を目的としています。登記情報等を営業活動に利用する場合は、個人情報保護法、関係法令、各種ガイドライン、社内規程等をご確認ください。相続・登記・税務・法律に関する個別判断は、司法書士・税理士・弁護士などの専門家へご相談ください。
参考情報
受付帳改正後の相続営業を、候補探しから仕組み化しませんか?
営業エリア・狙いたい不動産・現在の営業方法を伺い、候補抽出、所有者確認、登記情報、営業リスト化までの進め方をご案内します。