借換えは「総返済額 − 諸費用」でメリットを判断します
結論:借換えとは、現在利用している融資を返済し、新たな金融機関または新たな条件で融資を受け直すことです。金利や毎月の返済額を見直す手段ですが、借換えにかかる諸費用を含めた総返済額でメリットを判断する必要があります。
不動産を担保とする融資では、一般に既存の抵当権を抹消し、新たな融資に係る抵当権を設定します。抵当権抹消登記の登録免許税は不動産1個につき1,000円、抵当権設定登記は原則として債権額の0.4%です。
金融機関や不動産会社にとっては、借換えは単なる「金利の低いローンへの変更」ではありません。抵当権・根抵当権、設定時期、担保評価、担保余力などから営業仮説を作り、顧客の資金調達や資産活用を見直す接点になります。
この記事でわかること
- 借換えの仕組みと主な目的
- 抵当権抹消・設定にかかる登録免許税
- 3,000万円を借換える場合の費用イメージ
- 借換えメリットを総返済額で判断する方法
- 登記情報から借換え候補を検討するポイント
- 担保評価・担保余力と借換えの関係
- 不動産会社・地主営業で借換えを見る理由
- 不動産チェッカーを使った候補抽出
借換えとは
借換えとは、現在利用している融資を返済し、別の金融機関または新たな条件の融資へ切り替えることです。住宅ローンだけでなく、アパートローン、事業性融資、不動産担保融資などでも行われます。
一般の借り手にとっては返済条件を見直す手段ですが、金融機関にとっては他行取引先との新規接点を作る営業機会でもあります。
なぜ借換えが行われるのか
- 金利や総返済額を見直したい
- 毎月の返済負担を調整したい
- 返済期間を見直したい
- 複数の金融機関との取引を集約したい
- 資金繰りを改善したい
- 担保や共同担保の構成を見直したい
- 追加融資・設備投資・修繕等と合わせて資金調達を再設計したい
重要なのは、「借換えれば必ず得をする」わけではないことです。現在の契約条件と新しい条件を比較し、諸費用も含めて判断します。
借換えにかかる費用|抵当権の抹消と設定
不動産担保融資の借換えでは、既存融資を完済した後、既存の抵当権を抹消し、新たな融資のために抵当権を設定するのが一般的です。
| 手続き | 登録免許税 | ポイント |
|---|---|---|
| 既存の抵当権抹消登記 | 不動産1個につき1,000円 | 土地1筆+建物1個なら2,000円 |
| 新規の抵当権設定登記 | 原則、債権額の0.4% | 3,000万円なら12万円 |
3,000万円を借換える場合の登録免許税
| 項目 | 金額例 |
|---|---|
| 抵当権抹消(土地1筆・建物1個) | 2,000円 |
| 抵当権設定(3,000万円 × 0.4%) | 120,000円 |
| 登録免許税の合計 | 122,000円 |
これに加えて、司法書士報酬、金融機関の事務手数料、既存融資の繰上返済手数料、新規保証料等が発生する場合があります。費用体系は金融機関・契約・不動産の数等によって異なるため、実際の借換え前に確認が必要です。
住宅用家屋の0.1%軽減は「借換えなら使える」とは限らない
一定の住宅用家屋について、住宅の新築・取得資金の貸付け等に係る抵当権設定登記には、2027年3月31日まで0.1%の軽減税率があります。
ただし、この制度は個人が一定の住宅用家屋を新築・取得し、その新築・取得資金に係る抵当権を設定する場合の特例です。数年後に行う通常の借換えへ当然に適用されるものではありません。適用可否は登記内容や借入目的に応じ、司法書士等へ確認してください。
借換えのメリットは総返済額で判断する
借換えの判断で見るべきなのは、毎月の返済額だけではありません。基本は、新旧ローンの総返済額の差と、借換えに必要な諸費用を比較することです。
簡易的な考え方
借換えメリット = 旧ローンの残りの総返済額 − 新ローンの総返済額 − 借換え諸費用
残存元金と残存期間が大きいほど影響も大きくなりやすい
同じ金利差であれば、一般に残存元金が大きく、残存期間が長いほど、金利差による総返済額への影響が大きくなりやすくなります。
逆に完済が近く、残元金や残りの利息負担が小さい場合は、金利が下がっても借換え費用を回収できないことがあります。
比較したい3つのポイント
- 現在と新規融資の返済条件:残存元金、金利、残存期間、返済方式
- 借換えにかかる諸費用:登記、金融機関手数料、繰上返済手数料、保証料、司法書士報酬等
- 借換え後の返済期間:期間を延長すると月額は下がっても総返済額が増える場合がある
借換え=必ず得とは限らない
- 固定金利・特約期間中:契約によっては繰上返済手数料等が発生する
- 保証料:既存保証料の返戻や、新規融資での保証料発生は契約により異なる
- 返済期間の延長:月々の返済額が減っても、総支払額が増える場合がある
- 新規審査:借換え先の金融機関で改めて審査が必要
- 担保評価:現在の不動産価値や金融機関の評価次第では希望条件にならない場合がある
「金利が低いから借換える」のではなく、現在条件・新条件・諸費用を同じ土俵で比較することが重要です。
登記情報と借換えの関係
借換えの営業候補を探すとき、登記簿謄本の権利部(乙区)は重要な情報源です。
| 確認項目 | 借換え営業での見方 |
|---|---|
| 抵当権者・根抵当権者 | どの金融機関等が担保権者となっているかを確認する |
| 設定年月日 | いつ担保設定されたかを確認し、現在条件を聞く優先順位付けの材料にする |
| 債権額 | 抵当権設定時の融資規模を把握する参考にする |
| 極度額 | 根抵当権が担保する上限枠。現在残高とは異なる点に注意する |
| 共同担保 | 同じ債権の担保となる他の不動産を確認する |
- 見ること
- どの金融機関等が担保権者か
- 見ること
- いつ設定されたか、条件確認の優先度
- 見ること
- 設定時の規模・上限の参考
- 注意
- 現在残高ではない
- 見ること
- 同じ債権の担保となる他不動産
設定年月日が古いことは、現在の契約条件を確認する候補を絞る材料にはなります。しかし、「古い抵当権=現在より高金利」「古いほど借換えメリットが大きい」とは限りません。
また、債権額・極度額は設定時の情報であり、現在の借入残高ではありません。抵当権と根抵当権の違い・乙区の読み方は、「抵当権と根抵当権の違いとは?」で詳しく解説しています。
金融機関は何を見て借換え提案を検討するのか
- 担保評価:不動産の現在価値や処分可能性
- 担保余力:既存担保や不動産価値を踏まえた追加融資・借換え余地の仮説
- 返済状況:延滞の有無、返済能力
- 事業・収益性:法人の財務内容、賃貸物件の収支等
- 資産背景:他の不動産、預金、事業資産等
- 資金使途・将来性:借換え後の事業計画、修繕、追加投資等
不動産担保評価の実務もあわせて確認すると、登記情報と担保評価を営業仮説へ落とし込む考え方を整理できます。
担保余力は「設定額を引けば確定する」ものではない
登記上の債権額・極度額と現在残高は一致しません。さらに、金融機関ごとに担保評価・掛目・審査基準も異なります。担保余力は候補選定の仮説として使い、正式な融資判断は審査で行います。
不動産営業で借換えを見る理由
借換えは金融機関だけのテーマではありません。不動産会社、建設会社、地主営業でも、築古アパートの大規模修繕・建替え、土地活用や新規建築、相続による資産整理、不動産の売却・買換え・資産組み換え、法人所有不動産の資金調達などと同時に既存融資の見直しが必要になることがあります。
例えば、駐車場を所有する地主への土地活用提案で建築資金が必要になれば、既存借入と合わせて資金調達を見直すことがあります。
地主へのアプローチ方法や追客は地主営業で成果が出ない7つの理由、金融機関の新規開拓全体は融資先開拓とは?で詳しく解説しています。
登記情報だけでは分からないこと
- 現在の正確な借入残高
- 現在の適用金利や条件変更の履歴
- 固定金利・変動金利の現在の契約状態
- 繰上返済手数料や違約金の有無
- 借り手の借換え意向
- 金融機関内部の正式な担保評価額
- 返済状況・延滞の有無
登記情報は、借換えを「確定」する情報ではなく、何を確認すべき顧客かを絞るための営業仮説として使います。
借換え候補を効率的に見つける方法
営業エリア内の抵当権・根抵当権を一件ずつ確認し、金融機関名・設定時期・物件種別をExcelへ転記する方法では、多くの時間がかかります。
不動産チェッカーでは、地図上から物件・所有者・抵当権者・設定時期などを確認し、借換えや融資先開拓の候補を絞り込む業務に活用できます。
- 重点エリアの物件を地図から確認する
- 所有者・抵当権者・根抵当権者を確認する
- 設定時期や物件種別から確認優先度を付ける
- 担保設定を金融機関別に集計し、エリア内の設定傾向を把握する
- 候補をリスト化し、現在条件のヒアリングや提案へつなげる
融資ランキングは「現在の融資残高ランキング」ではありません
登記された抵当権者等を集計することで、金融機関別の担保設定件数や傾向を確認できます。ただし、無担保融資、現在残高、抹消済み取引などを含む実際の融資残高ランキングではありません。
複数物件の登記簿PDFをまとめて比較する場合は、無料PDF変換サービス(1回100件まで)や謄本取得スポットを利用し、Excel等へ一覧化する方法もあります。
他行の抵当権者・設定時期・物件種別・共同担保を地図上で確認し、ヒアリング候補を絞れます。
現在金利・残高・借換え意向は登記だけでは分からないため、候補抽出後に顧客との対話で確認します。
よくある質問
借換えとは簡単に言うと?
現在の借入を返済し、新たな融資へ切り替えることです。
借換えは住宅ローンだけですか?
いいえ。アパートローン、事業性融資、不動産担保融資などでも行われます。
抵当権があっても借換えできますか?
可能です。一般には既存融資完済・抵当権抹消後、新たな抵当権を設定します。
抵当権設定の登録免許税は?
原則として債権額の0.4%です。住宅取得資金の軽減は通常の借換えへ当然適用されるものではありません。
借換えメリットはどう判断しますか?
新旧ローンの総返済額差から、登記・手数料・保証料等の費用を差し引いて判断します。
登記情報だけで借換え候補を判断できますか?
借換え意向や現在条件は分からないため、営業仮説づくりに使います。
まとめ
- 借換えは既存融資を返済し、新たな融資へ切り替えること
- 不動産担保融資では、一般に既存抵当権の抹消と新規抵当権の設定が必要
- 抵当権抹消登記は不動産1個につき1,000円
- 抵当権設定登記は原則として債権額の0.4%
- 住宅取得資金の0.1%軽減は、通常の借換えへ当然に適用されるわけではない
- 借換えは月額返済ではなく、総返済額と諸費用で判断する
- 設定時期が古いだけで借換えメリットがあるとは限らない
- 登記情報は現在残高・現在金利・本人の借換え意向を示すものではない
- 抵当権者・設定時期・担保評価・担保余力を組み合わせ、営業候補を絞る
借換えは、金利競争だけではなく、顧客の資金調達・不動産活用・資産承継を見直す接点です。登記情報から候補を見つけ、現在の契約条件を丁寧に確認したうえで、借り手に実質的なメリットがある提案へつなげることが重要です。
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ご注意ください
本記事は2026年8月24日時点の公表情報に基づく一般的な情報です。実際の借換え費用、登録免許税の軽減措置の適用可否、抵当権抹消・設定手続、融資条件については、金融機関、司法書士、税理士等の専門家へご確認ください。借換えの可否や条件は、審査・契約内容・不動産・借り手の状況によって異なります。
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